村田梢 医学部附属病院特定講師(兼:理化学研究所客員研究員)(研究当時:理化学研究所研究員)、升本英利 同特定教授(兼:理化学研究所客員主管研究員)(研究当時:理化学研究所上級研究員)らの研究チームは、iPS細胞を心臓や血管の細胞に分化させるために必要な生理活性タンパク質(サイトカイン)を、植物による一過性の遺伝子発現系を用いて生産する手法の開発に成功しました。
本研究成果は、低コストで安定的にサイトカインを供给する新たな可能性を示し、心血管再生医疗の発展?普及に贡献することが期待されます。
サイトカインの一種である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)やアクチビンA(Activin A)は、ヒトiPS細胞から血管内皮細胞や心筋細胞への分化を誘導する際に不可欠な、培養液に添加される因子です。しかし、現在製品化されているサイトカインは、タンパク質合成系として大腸菌や哺乳類細胞を用いて生産されるため、免疫原性やウイルス汚染のリスクが伴うという課題があります。
本研究チームは、タバコ属植物(ベンサミアナタバコ)の葉にヒトのサイトカインを発現させる手法を開発し、この手法で生産したVEGFおよびActivin Aが従来法による製品と同等の生理活性を持つことを実証しました。これにより、心血管再生医療に用いるVEGFおよびActivin Aの新たな生産手法として、植物の発現システムが有望であることが示唆されました。
本研究成果は、2025年6月25日に、国際学術誌「Stem Cell Research & Therapy」にオンライン掲載されました。

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【书誌情报】
Kozue Murata, Kanae Takamura, Risa Watanabe, Akitomo Nagashima, Miho Miyauchi, Yoshiteru Miyauchi, Hidetoshi Masumoto (2025). Production of bioactive cytokines using plant expression system for cardiovascular cell differentiation from human pluripotent stem cells. Stem Cell Research & Therapy, 16, 303.