水畑吉行 化学研究所准教授、内田大地 同博士課程学生、行本万里子 同助教(研究当時)、時任宣博 名誉教授、山内光陽 同助教、山田容子 同教授らの研究グループは、水素や二酸化炭素といった小分子の活性化で注目されるゲルミレン(R2骋别:)の化学を拡张し、炭素原子(メチレン基)で2つのゲルミレン部位を直接つないだ新しい化合物「メチレン架桥1,3-ビスゲルミレン」の合成に世界で初めて成功しました。この分子は、固体では环状の构造(二量体)を形成し、溶液中では元の解离した构造へと可逆的に変化する“动的挙动”を示すという极めてユニークな性质を持ちます。
この化合物は、従来の安定化された1,3-ビスゲルミレンでは见られなかった高い反応性を持ち、硫黄(厂8)との反応によるかご型分子の构筑や、ベンゼンといった安定な芳香族分子の活性化など、これまでにない化学変换を可能にします。本成果は、复数の高反応性元素部位を制御しながら动的に利用できる新たな分子设计の可能性を拓きました。
本研究成果は、2025年6月23日に、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。さらに本論文は、同誌の「Hot Paper」(注目論文)に選定されました。

「研究室内外の多くの知见を融合することで、この成果にたどり着くことができました。架桥原子の违いがここまで大きな违いをもたらすとは予想していませんでしたが、典型元素化学の新たな展开に向けた重要な一歩だと感じています。今回报告した内容以外にも、1,3-ビスゲルミレンが多様な电子构造を持つ化学种や新规な反応性の创出につながることを见いだしています。引き続きその魅力を引き出していきたいと考えています」(水畑吉行)
Daichi Uchida, Mariko Yukimoto, Norihiro Tokitoh, Mitsuaki Yamauchi, Hiroko Yamada, Yoshiyuki Mizuhata (2025). Reactivity of a Methylene-Bridged 1,3-Bis(germylene) in Dynamic Equilibrium with Its Dimer. Angewandte Chemie International Edition, e202508927.