非自明な保存量がもたらす缓和の遅れ―孤立量子多体系における热平衡化の理解の深化に期待―

ターゲット
公开日

※ 本文を一部修正しました。(2025年6月10日)

 周囲の环境と相互作用をしない孤立した量子多体系がどのように热平衡状态に至るか(热化するか)という问题は、现代の量子物理学および热?统计物理学における重要なトピックの一つとなっています。そこでは特に、热化のメカニズムの理解のために、逆に热化しない非エルゴード系と呼ばれる系が注目され、盛んに研究がなされています。そのような非热化の振る舞いをもたらす机构として、非自明な保存量が存在することで热化が妨げられる、ヒルベルト空间断片化と呼ばれる机构が近年注目を集めています。

 本多寛太郎 理学研究科博士課程学生(現:同博士研究員)、高須洋介 同准教授、高橋義朗 同教授らの研究グループは、段下一平 近畿大学教授らの研究グループと共同で、光格子と呼ばれるレーザーで形成された周期的な格子中に極低温の原子気体を導入した系を用いて、ある特殊な粒子配置の初期状態からの緩和の遅れを観測しました。特に、この緩和の遅れがヒルベルト空間断片化に起因することを示す非自明な保存量の存在を初めて確認しました。本成果は、孤立量子多体系の熱平衡化に関する理解を深化させ、理論と実験の双方からの更なる研究を促進すると期待されます。

 本研究成果は、2025年6月6日に、国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
一次元光格子中の极低温原子のイメージ図。緑の曲面が光格子を、青の球体が原子を表す。
研究者のコメント
「孤立量子多体系の热平衡化については、本研究で用いた冷却原子系をはじめとする近年の人工量子系の制御技术の発展に伴い、実験的にもますますホットなトピックとなっています。そのような中で、このトピックに関してタイムリーな贡献ができたことを嬉しく思います。」(本多寛太郎)
研究者情报
研究者名
高須 洋介
研究者名
高橋 義朗
书誌情报

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【书誌情报】
Kantaro Honda, Yosuke Takasu, Shimpei Goto, Hironori Kazuta, Masaya Kunimi, Ippei Danshita, Yoshiro Takahashi (2025). Observation of slow relaxation due to Hilbert space fragmentation in strongly interacting Bose-Hubbard chains. Science Advances, 11, 23, eadv3255.